☆純愛のベクトル
「あなた知ってる? この岬の伝説……」
「そんなことより、さっきの話。アイツから何て言われたのさ」
「うん……。私の運命を変えたあの言葉、くぅー」
「白々しいな、そのリアクション。そんなにショッキングなものだったのかぁ?」
「そりゃそうよ。でなきゃ、今ごろ主婦してるわよ」
「ま、言いたくないなら聞かないけどね。それにしてもアイツ、罪な野郎だよな」
「その罪な野郎の親友は、ど・な・た?」
「おいおい、そりゃないゼよ。親友ったって性格は正反対だしな」
「そう、まるで磁石ね。正反対同士がくっつくなんて、あはは」
「……しかし、俺にも理由を話さずに逝ってしまったんだよねぇ。あのバカ」
「ねえ。この岬から身投げした者は、あの世で必ず想い人と一緒になれるんだって」
「なんだよ、それが伝説なのかい?」
「彼がそう言ってたわ」
「おい、まさか自殺に関係してる話じゃないよな。え?」
「私に……言ったのよ、私にそうなれって、私に身投げしろって!」
「な、なにを言ってるんだ?」
「彼が愛していたのは私ではなかった。努力をして、したけど無理だったと」
「うそだ! 俺たち三人はいつも一緒だったじゃないか。アイツは俺に勝ち、おまえと恋仲になった。そうだったじゃないか!」
「でも、ちがったの。そのあと彼の口から出たのは、あなたの名。そして私は彼の背中を押した。そう、伝説どおり彼の想いを叶えてあげるために」
「う……そんな」
「許さないわ、今でも。……さて、あなたはどうしたい?」
[第1話 完]
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